一般社団法人IT人材育成協会

Association for IT Human Resources Development

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higurashi株式会社ウチダ人材開発センタ
日暮 薫(ひぐらし かおる)氏

インストラクター
主な担当:HW・C言語・Java・Office
新入社員研修では'07'08UHDウチダカレッジ情報技術基礎研修主管としてHW・DB・プレゼンテーションを担当
'02-'04青年海外協力隊システムエンジニア隊員としてジャマイカの大学で情報系コースの講師を担当

 

春の嵐-新入社員研修も終わり今年も新入社員研修の季節が終わった。

「ゆとり世代」、シュガー社員、…色々な言葉で説明され尽くされた感があるが、自分自身2008年度の新入社員研修を担当して受けた印象。空気を読み突出せず、言われたことはそつ無くこなすが手を上げることは少ない。自分が未熟だと周囲の人間に思われることを恐れ、自らリスクテイクをしようとしない。新入社員は未熟で当たり前なのに…。

指摘され、注意され、叱られ、そして気付きながら身に付けていくはずの社会人としての知識・経験。それを前もってインターネットにあふれる情報の洪水から検索し、自分自身にコピー&ペーストして既に身に付けた気になっている。

もちろん全てがそんな新人なわけではない。ただこれだけ情報があふれる現代社会。情報は前もって検索して当たり前。調べておいて当たり前、なのである。そして周囲の同じ境遇の人間たちがこぞって同じことをしている。自分も調べなければ置いていかれる。調べるな、と言う方が無理であろう。

そんな彼らに対するIT技術研修。もちろん内容は検討を重ね、前回前々回を振り返り改良も重ねている。4~6月はインストラクター総動員の総力戦である。

ITの基礎となるべき部分を教えられることは自分にとって非常に大きい。基礎知識の総復習であり、ビジネスマナーの再確認でもある。毎年新たな発見・自分にとってプラスとなる気付きがある。やりがいが自分へのリターンに直結し非常に「楽しく」研修を担当した。

そんな新入社員研修の中、強く感じたことがある。
自分が行っているインストラクションがすぐに反応として返る。こちらは技術・知識の講義を行っているのだが、「自分の行い」が彼らの行いとして返ってくる。新入社員研修は担当するメイン講師の振る舞いによって与える、新入社員の仕事(研修受講)態度に対する影響が非常に大きい。普段の研修では講師の研修態度よりもやはり内容に重きがおかれる。アンケートなどでも内容が評価の対象になる。しかし新入社員研修は違うのだ。

考えてみれば当たり前のことではあるのだが。マナー研修でいくら「上司・同僚に自分から挨拶をしましょう」と言っても、その講師が受講者に対して「自分から」挨拶をしていなかったら、受講生は挨拶をするようにはならない。朝、私達が彼らにこちらから挨拶をするからこそ、彼らも自発的に挨拶をし始める。私達は研修ルームに入るとき、ドアを開け、一礼をする。出るときもルーム内を向き一礼して出る。時が経ち8月になった今も、会社の部屋に入るときにきちんと一礼をする新人がいる。

新入社員研修では研修の「内容」よりもメイン講師の「振る舞い」の方が何倍もその後の新人達の仕事に対する取り組みに対して影響があるのではないか、と感じたのである。知識は勉強を継続すれば身に付いていく。また勉強し続けるのが当たり前でもある。ただ振る舞いは一度身に付け損なったものをまた身に付けるのは非常に難しい。

あれも教えなければ、こちらの分野の基礎知識も必要だ、お客様からはここの知識を重点にと言われた…等々、前述したように内容に関して私達は熟慮を重ねる。ただそんな熟慮を重ねて導き出したカリキュラムよりも、講師の「振る舞い」がその後の新入社員たちの人生を左右する。

そのことを忘れずに来年度、再来年度も新入社員研修に臨まねば、と思うのである。